「仏教、本当の教え」 植木雅俊 中公新書


仏教本当の教え

著者の植木氏は、仏教研究の第一人者 故中村元先生の立ち上げた東方学院という私塾において中村先生の教えを受けた方です。

主に大乗仏教聖典の本当の内容を伝える書

もともと、理系出身の氏ですが、子供の頃より仏教に興味をいだき、社会人になってから研究する立場にいたったようです。

そのため、専門の仏教学者と異なり、肩肘の張らない、言い方は良くないかもしれませんが、見栄のない素直な内容となっています。

仏教本当の教え目次1

中村先生から薫陶を受け、尊崇している心情もそこかしこに見えます。本来、学術書としてはそれはあまり良くないかもしれませんが、本書にかぎっていえば、そこもまた好ましい印象があります。

さて、本書の内容としては、仏教がインドから中国、日本に伝わった時に言語や文化の違いにより、どのように変遷したか、といったところに注目した比較文化論に重点をおいたものとなります。

従って、語源や言語に関わる内容が詳細に展開されます。

意訳であって音をあらわす漢字には意味がなかったのに、後世になって漢字から意味を解釈されて間違って伝わっている言葉があるなど、とても興味深い内容となっています。

仏教本当の教え目次2

「仏教、本当の教え」というところから、お釈迦様の本当におっしゃったと推察できる教えについての内容かと期待すると、少し当てが外れるかもしれません。

大乗仏教も含めてのインドから伝わった「仏教聖典の本当の内容」と言ったほうが正確です。(特に法華経が中心)

つまり、「仏教、本当の教え」の仏教とはインド仏教全般のことであり、お釈迦さまが直接説いた教えのことではありません。大乗仏教がお釈迦様の説いた教えではないことは植木氏自身も認めるところです。

しかし、我々日本人にとって、仏教を思考する上で漢字による仏教用語はかなり不可欠なものなので、それらの真の意味を知るということは今後の仏教を学ぶ立場の人間には大いに役立つものであると考えられます。

少なくとも、漢字による仏教用語の意味を、そのまま鵜呑みにしない、という心構えができました。

その点で、読んで良かったと思える一冊です。


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