仏教、瞑想以外で久しぶりに面白い本を読んだ


小説入門

仏教、瞑想以外で久しぶりに面白い本を読みました。

「書きあぐねている人のための小説入門」保坂和志 中公文庫

本書は一応、小説入門となっておりますが、技術的な書き方のノウハウなどではなく、「小説とはなにか」といった本質的な部分を追求した内容となっております。

そして、技術的に指導してくれる訳ではないのですが、実はこの本質の追求こそが小説家への近道だと教えてくれます。

考え方もユニークで、例えば本当の小説にはストーリーはいらない、など極端なこと、私達が今まで考えてもいなかったような方向から切りつけてきます。

その他に登場人物に役割を振らないとか、テーマはいらないとか。今までの小説入門と言われる本が解説してきたテクニックとはまるで正反対の方向、というか完全否定という格好です。

そして、この本を理解すれば、何人かは必ず小説家になれる、と豪語します。その自信が嬉しい限りで、読む方の気持ちも高揚します。

表面的内容については、必ずしも全て受け入れる気持ちにはなれませんが、この本の根底に流れる哲学のようなものには大いに感銘し、また自分も小説を書いてみたくなりました。

つまりは、本にはそういった情熱や人を感化する力が必要で、些細な意見の相違などはどうでも良いことなのです。

また、逆に感銘も、反駁する気持ちも何も起こさないような、愚にもつかないノウハウ書など、読むには値しないということでもあります。

私は、小説を読む場合、ストーリーを追って一気に読むタイプだったのですが、この本によって、一文一文を楽しむ、つっかえつっかえ読んだりする、とかそういった楽しみ方もあるんだ、という形の有益な気付きを得ることができました。

小説とは今読んでいる瞬間にのみ小説足りえる、といった初期仏教に通じるような考え方もそこかしこに出てきて、興味をそそります。

本書は、小説家を目指す人にも読む側の人にも、自分の中で未知の方向から小説の本質をつかませてくれる、格好の書といえます。


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