すばる文学賞と小説すばる新人賞の面白そうな作品を読んでみて

黄金の庭

よく考えると、小説の新人賞というものは、ありがたいものです。何しろ、下読みのプロ達がしろうとの書いた雑多な文章を、無償で評価してくれるのです。小説家志望の人間の作品が、こんなに大勢の方に客観的に評価してもらう場など他にはないのではないでしょうか。

多少の運もあるかもしれませんが、大体において良い作品は最後まで残るようです。新人賞突破が小説家になるための一番の近道だといえるでしょう。

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オオスズメバチの帝国に、人間の運命を見たのは僕だけだろうか

風の中のマリア

不思議な小説です。

主人公は擬人化されたマリアというオオスズメバチ。

しかし、全くの作り話というわけではなく、オオスズメバチの生態を忠実に再現した物語となっています。

従って、読み終える頃には、オオスズメバチのちょっとした専門家になっているでしょう。

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電子本の埋め合わせで買った本が意外と当たりだった「ラッシュライフ」

ラッシュライフ
ここのところ小説って全然読んでいなかったのですが、保坂さんの「書きあぐねている人のための小説入門」に刺激されて何冊か購入してみました。

「ラッシュライフ」伊坂幸太郎

そのうちの一つがこれ、そうKindleの電子本です。

伊坂幸太郎、確か映画化された「重力ピエロ」という作品を書いた人です。

映画は岡田将生や吉高由里子などが出演していました。

「ラッシュライフ」ですが、実はあまり期待してませんでした。外出時の読書用に電子本を揃えたくて、てきとうに購入した、というのが本当のところ。

電子本では小説を二冊購入したのですが、一冊はちょっとひどい出来でした。名前はだしませんが……

しかし、「ラッシュライフ」については、購入して正解でした。

内容としては、ミステリーで、五つの物語が別々に進行していくのですが、それらの物語がいつの間にか互いに関係しあっていて、しかも時間が少し戻ったりして巧妙に絡み合います。

じっくり読まないと全部を追い切れないほど複雑に絡みますが、それらが破綻せずうまい具合にまとまっています。

あの場面はこことつながっていたのか、などともう一度読み返したくなること必至。

但し、セオリーに則ったミステリーではありませんので、そのへんを期待する人には向かないかもしれません。

時間が戻ったりするので、読みながらイラつく方もいるでしょうが、私にはなかなか面白い小説でした。

さらに読後にわかったことですが、この人の作品は、作品どうしでも共通の登場人物がでてきたりと、絡んでいるらしい。

うまい手法で、私も一作目から読んでみたいと思ってしまいました。

PS.一作目買ってしまいました。(こちらは紙の本で)